障害年金が不支給・却下になったらどうする? 不服の申し立て(審査請求)

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私が書きました
shiroki.sr

障害年金を請求すると、おおむね3か月程度で結果がご自宅に郵送されます。

年金がもらえる場合には年金証書が、不支給や却下となった場合には「不支給決定通知書」や「却下通知書」が届きます。

年金の手続は、必ずしもこちらの思った結果になるとは限りません。

更新で年金が止まってしまったり、額改定が認められなかったり、思ったより低い等級にされてしまうこともあります。

それでは、結果に納得がいかない場合はどうすればよいのでしょうか。

 

1.審査請求について

下された処分に不服がある場合は、全国に8箇所ある厚生労働省地方厚生局の社会保険審査官に不服の申立てをすることができます。

この手続きを審査請求と言います。

請求手続きに費用は掛かりません。

審査請求は決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内文書または口頭で行います。

なお、審査請求は下された処分に不服がある場合のみ行えます。

もし更新で(上がると思っていた)等級が変わらなかったという場合は、「処分がない」とみなされるため、仮に不服があっても審査請求は出来ません。

審査請求が可能な場合は以下になります。

“審査請求が可能な場合”

  • 年金の請求が認められなかった
  • 年金の請求は認められたが、等級が低かった
  • 更新で等級が下がった、または支給停止になった
  • 額改定請求や支給停止事由消滅届が認められなかった

2.審査請求に必要な書類

審査請求は「文書または口頭で行う」となっていますが、通常は審査請求書に必要事項を記載して提出します。

審査請求書はインターネットでダウンロードが可能です

社会保険審査事務室(下記のリンクから、関東信越厚生局の審査請求書のダウンロードができます)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/gyomu/bu_ka/shakai_shinsa/index.html 

なお、厚生労働省地方厚生局に電話で審査請求をしたい旨を伝え、必要書類を郵送してもらうこともできます。管轄は以下になります。

厚生(支)局名

管轄区域

郵便番号

所在地

電話番号

北海道厚生局

北海道

060-0808

札幌市北区北7条西2-15-1
野村不動産札幌ビル2階

011-796-5158

東北厚生局

青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県

980-8426

仙台市青葉区花京院1-1-20
花京院スクエア21階

022-208-5331

関東信越厚生局

茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、

東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県

330-9713

さいたま市中央区新都心1-1
さいたま新都心合同庁舎1号館5階

048-851-1030

東海北陸厚生局

富山県、石川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県

461-0001

名古屋市中区三の丸2-2-1
名古屋合同庁舎第1号館6階

0570-666-445

(ナビダイヤル)

近畿厚生局

福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県

540-0011

大阪市中央区農人橋1-1-22
大江ビル8階

06-7711-8001

中国四国厚生局

鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県

730-0017

広島市中区鉄砲町7-18
東芝フコク生命ビル2階

082-223-0070

四国厚生支局

徳島県、香川県、愛媛県、高知県

760-0019

高松市サンポート2-1
高松シンボルタワー10階

087-851-9564

九州厚生局

福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

812-0011

福岡市博多区博多駅前3-2-8
住友生命博多ビル4階

092-707-1135

 年金・健康保険制度に関する審査請求についてのお問合せ
 0570-03-1865(ナビダイヤル)
※050で始まる電話でおかけになる場合は048-851-1030(一般電話)

 

3.審査請求書の作成方法

審査請求書の作成方法については、氏名や住所、年金番号などを誤りのないように記載していきます。

ホームページ等に記載要領がありますので参考にしながらの作成をお勧めします。

https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/gyomu/bu_ka/shakai_shinsa/000215125.pdf 

原則としては記載要領にそって記載すれば良いですが、記載項目の中に審査請求の趣旨及び理由という欄があり、ここには注意が必要です。

<審査請求の趣旨及び理由の画像> ※クリックで拡大

請求者はこの欄に、社会保険審査官に対してどのような決定を求めるか、その根拠ははたしてどういうものなのかを記載します。

この欄が請求の要になります実務上は非常に長文になるため、別紙で行います。

 

4.審査請求のポイント

審査請求が認められる確率は処分変更も合わせて10%~12%程度と言われています。

ハードルは高いですが、審査請求が認められることで、年金の等級が上がったり、不支給だった年金が貰えるようになるので、そのリターンは大きなものになります。

なお、不服申し立ての機会は審査請求・再審査請求を合わせても2回しかありません。

申し立ての内容についても、認定基準を踏まえるのは当然として、実際に保険者側がどういう審査をしたかを把握し、的確に反論する必要があります。

したがって、通常は障害年金専門の社会保険労務士に依頼するのをお勧めします。

この項目では「どうしても自分で審査請求をしたい」という方のために、最低限抑えるべきポイントをまとめました。

 

4-1.具体的な認定基準に該当していることを主張する

「趣旨及び理由」の欄には、必ず自分の障害がどの認定基準に該当しているか」記載する必要があります。

ここでいう認定基準は症状ごとの個別のものです。

例えば3級の場合、認定基準の基本的事項では「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と例示されています。

しかし、労働に支障が出ていることだけをどんなに主張しても3級にはなりません。

傷病ごとの個別の認定基準に該当する必要があります。

精神の障害であれば精神の基準、肢体の障害であれば肢体の基準に該当することを証明していきます。

さらに、この内容は客観的なものである必要があります。通常は診断書の記載を用いて主張します。

「請求人の障害は右下肢障害であり、診断書によると右下肢の筋力はすべて著減状態となっている。

これを下肢障害の認定基準に照らすと2級相当の例示である『一下肢の用を全く廃したもの』に該当する為、請求人の障害状態は2級相当である」というような形で詳述していきます。

 

4-2.不利益処分の理由に反論する

認定基準に該当していることを主張した後は、不利益処分に対しての反論を行います。

この時、「なぜ自分の請求が認められなかったのか」「なぜ等級が下がってしまったのか」という理由がわからなければ反論も出来ません。

処分理由については令和2年4月より処分通知に明記されるようになりましたが、不明確な場合は厚生労働省の情報公開室に対して開示請求を行うことが出来ます。

開示請求は本人確認書と住民票、300円の手数料が必要です。

厚生労働省のホームページで「保有個人情報 開示」と検索すると記載例、請求書がダウンロードできます。

準備ができたら、にある厚生労働省大臣官房総務課公文書監理・情報公開室に郵送しましょう。

取り寄せるまでには1か月程度掛かるため、開示をする場合には早めに手続きを行いましょう。

理由をはっきりさせた後は、「保険者はこういう理由で不支給としたが、この理由は認定基準に照らすと間違っており、実際はこういう審査をすべきだった」「保険者のこの認識は事実誤認であり、事実はこうだった」という形で反論を行います。

<保有個人情報開示請求書の画像> ※クリックで拡大

ホームページ等に記載要領がありますので参考にしながらの作成をお勧めします。

https://www.mhlw.go.jp/jouhou/hogo06/dl/01a.pdf 

 

4-3.追加資料を付ける

審査請求では、原則としてすでに提出した資料を使って再審査がされます。

なので、診断書などは付け加えてもあまり意味がありません。

ですが、例えば「働いていたこと」を理由に不支給になった請求人に対し、当時の出勤簿などを追加し「実際には、請求人はこの時期まったく仕事をしていなかった」というように、事実認定の裏付けに資料を提出することがあります。

追加資料は審査請求において必ず必要なものではありません。

「この場合はこれを持っていくといい」といったマニュアルもありません。

自己判断で臨機応変に用意する必要があります。

なお、審査請求にあたって新たに診断書を重く書き直してもらったり、「診断書はこう書いてあるけど、実際はもっと重かった」と医師に追記をもらったとしても、後付けの資料とみなされされ、参考にしてもらえない可能性が高いです。

 

5.審査請求の流れ

審査請求をすると、最初に保険者は、行われた処分(原処分)が妥当なものであったか再検討を行います。

その時点で保険者側が「妥当ではない」と判断し、処分を変更することがあります。

これを原処分変更といいます。

処分変更がなされた場合、審査請求は中止になります。

保険者側が「処分が間違っていました」と認めたことになるからです。

処分変更された旨が請求者と審査官に通知され、審査官から審査請求を取り下げるように指示が来ます。  

処分変更をしない場合には、保険者は自らの処分の正当性を主張する保険者意見書を社会保険審査官に送付します。

そうすると、改めて審査官による審査が開始されます。

その後、容認、棄却、却下のいずれかの結果を記載した決定書が郵送されることになっています。

<決定書の画像> ※クリックで拡大

審査期間としては、4~5か月が一般的です。

ただし個人差が大きく、照会を行った場合などさらに数か月かかることもあります。

 

6.審査請求の後について

残念ながら審査請求が棄却され、それでも処分に不服があるときは2つの手段の可能性があります。

1つ目は、厚生労働省社会保険審査会へ再審査請求を行うことです。

期限は審査請求決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内で、社会保険審査会(厚生労働省内)に再審査請求の手続きを行います。

2つ目は、あまりに理不尽な場合は裁判を起こすことです。

なお、もし裁判を起こしたい場合は(決定の取消の訴え(行政事件訴訟等))を起こす場合は、原則として、審査請求の決定を経た後でないと提起できません。

(ただし、以下の場合には審査請求の決定を経なくても、審査請求の決定があったとみなして訴えを提起することができます)

(1)審査請求があった日から2か月を経過しても審査請求の決定がないとき

(2)決定の執行等による著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき

(3)その他正当な理由があるとき

 

7.まとめ

この記事では、審査請求について解説しました。

やや難しい内容だったと思います。

記事内ではさらっと書きましたが、認定基準を調べるだけでも大変ですし、

開示請求などで相手の提示した理由を明らかにし、それに対して制度や法律や判例、過去の社会保険裁決例などを調べて反論を行うわけですから、

現実的には自力ではなかなか難しいです。

やはり万全を尽くすなら、社会保険労務士に頼む必要があるかもしれません。

なお、通常の依頼をする際も、「もし請求に失敗したら審査請求をしてくれるか?」という点は社会保険労務士選びの大事なポイントになります。

少なくとも「こういう不服申し立ての制度がある」という点は覚えておくことをお勧めします。

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