1.自分で請求する場合
障害年金の請求手続き自体は、実はそこまで難しくはありません。年金事務所で障害年金の請求がしたいと伝えれば書類一式もらえますので、あとは案内に従って手続きを進めていけば、時間と気力さえあれば誰でもできます。
ただし、障害年金の受給権は単に必要書類を提出するだけで認められるものではなく、自分の障害が障害認定基準に適合していることを証明しなくてはなりません。
介護認定のように調査員が来て、実際の状態を調査してくれるわけではありません。審査はあくまで提出した書類のみで行われます。ですから「自分の障害がいかに重いか」という点を書類上で具体的かつ正確に申し立てていく必要があります。
①認定基準を知る
日本年金機構は認定基準を公開しています。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/01.pdf
まずは自分の障害がどの基準に該当するかを知ることが第一歩です。実際にはこの基準に載っていない内部的な通達による判断基準がたくさんありますので、すべてを知り尽くすことはできません。しかし、ある程度でもこの基準を踏まえなければ、請求がただの運任せ、医師任せになってしまいます。認定基準を把握することが受給確率を上げることに繋がります。
②正確な診断書を書いてもらう
審査の上で最も重要な書類が診断書です。検査結果や臨床症状の他、日常生活能力についてもしっかりと記載してもらう必要があります。
しかし主治医も患者一人一人の日常生活まで細かく把握しているわけではありませんから、作成にあたっては実際の生活状況をしっかり伝える必要があります。「自分が請求する傷病については、どういう情報が必要なのか?」という点を踏まえ、ポイントを絞って情報を伝えることが求められます。
簡単ではありませんが、本当は症状が重いのに不支給になったり、低い等級の年金になってしまうことを防ぐためには必要なことです。
③的確な病歴申立書を作成する
病歴・就労状況等申立書は、今までの通院歴を記載するだけでなく、日常生活の支障をアピールする書類でもあります。認定基準を踏まえた上で、自分が基準に該当していると思う根拠があればそれをしっかりと強調しましょう。
なお、請求にあたっては書類同士の整合性も見られますので、診断書等の書類に内容や時期を合わせて作成するのも重要なポイントです。
④請求方法を確認する
まずは認定日請求ができるかどうかを判断します。認定日が過去ならば当時の通院歴からカルテが残っているかを確認し、診断書が取れれば遡って請求を行います。また、生活保護や傷病手当金等との調整や、遺族年金、老齢年金との選択など、他の制度との絡みで問題が出てくることもあります。
複数の障害がある場合は、診断書を複数取るかという選択も出てきます。足せば足すほど有利になる場合もありますが、二つの障害を併合しても等級が変わらなければ、診断書を何枚も作成する意味はありません。
なんでもかんでもありのままを主張し、請求すればいいというわけではありません。常に「どんなふうに請求したら自分にとって一番有利なのか」を考える必要があります。
2.社会保険労務士に依頼する場合
続いて、社会保険労務士に依頼する際のメリット、デメリットを紹介します。
メリットとしては、今述べた①~④の手続きをほぼ丸投げできるということです。いちいち認定基準など調べる必要がありません。医師への依頼状も病歴申立書も作成してもらえますし、どう請求すれば一番有利かの判定もしてもらえます。請求上発生するイレギュラー(初診の病院が廃院になっている等)についても適切に対応してもらえます。さらに事後重症請求の場合は、早く請求するほどもらえる年金が増えますので、スピーディな手続きによって金銭的なメリットが生まれることもあります。
一方で、デメリットはコストがかかるという事です。社会保険労務士の報酬相場は年金の2か月分、遡及請求した場合は遡及額の10%です。自分でやればこのコストはかかりません。社会保険労務士に頼んだことで報酬以上にもらえる額が増え、金銭的に得するという場合もありますが、必ず全員がそうなるとは限りません。
また、障害年金について知識と経験のある社会保険労務士を選ぶ必要があります。障害年金の知識は実務的なものが大半ですから、経験がなければほとんど何もわかりませんし、スピードのある仕事も出来ませんので、メリットの大半がなくなります。とくに難病の人などは、自分の請求傷病について請求経験があるかを、契約前に確かめてみることをお勧めします。