障害年金の額は、等級によって決定されます。
しかし障害の状態は一定ではありませんので、場合によっては受給決定後に症状が悪化することもあります。
更新の際に障害増進とみなされ等級が上がることもありますが、更新は数年に1回しかありません。
逆に言えば、数年に1回しか等級を審査してもらえません。
もし障害が重くなって上位等級に該当しているなら、少しでも早く等級を上げてほしいものです。
また、人によっては永久認定と言って、更新の手続き自体がない人もいます。
その場合、障害状態が重くなっても等級が上がることはなく、ずっと低いままの年金が支給され続けることになります。
そのような人のために用意されている手続きが額改定請求です。
1.額改定請求とは
障害の程度が重くなったとき、年金の等級を変更して年金額の増加を申し出る手続きを言います。
具体的には、現時点での診断書を作成し「障害給付額改定請求書」と併せて提出します。
<障害給付額改定請求書の画像>※クリックで拡大
2.額改定請求が出来る条件とは
額改定請求は、3級→2級、2級→1級のように、現在の障害状態が上位に該当する場合に可能になります。
ただし、障害厚生年金の3級で、過去に2級以上に該当したことのない方については、65歳以降の額改定請求は認められません。
他にも、額改定請求については、以下の期間制限が設けられています。
- 年金を受ける権利が発生した日から1年を経過した日
- 障害の程度の診査を受けた日から1年を経過した日
例えば、権利が発生した日が令和4年7月15日なら、1年を経過した日つまり令和5年7月16日から額改定請求が可能になります。
この「権利が発生した日」「診査を受けた日」という表現は少しわかりづらいため、具体的な例をあげて説明します。
2‐1 新規の裁定請求を行った場合
裁定請求を行った場合は、受給権の発生からカウントして1年待つ必要があります。
障害年金の請求は認定日請求と事後重症請求の二種類がありますが、
認定日請求で受給権が発生した場合は、「障害認定日」から1年経過後です。
事後重症請求で受給権が発生した場合は、「裁定請求受付日」から1年経過後になります。
また、認定日と請求日が1年開いている場合は、認定日請求と事後重症請求を同時に行うことになります。
その場合、額改定請求が出来る時期は以下の2パターンに分類され、それぞれ「権利の発生した日」が異なります。
・認定日請求の等級と、事後重症請求の等級が同じ場合:認定日が「権利が発生した日」になります。
(いつでも額改定請求が可能です)
・認定日請求の等級と、事後重症請求の等級が異なる場合:請求受付日が「権利が発生した日」になります。
(請求受付日から1年経過後に額改定請求が可能です)
2-2 更新手続きを行った場合
更新の場合は、「障害の程度の診査を受けた日」から1年を経過した日に額改定請求が可能になります。
「診査を受けた日」がいつなのかは更新の結果によって変わりますので、ケースごとに分類します。
更新の結果 | 審査の日(この日から1年を経過した後なら更新ができる) |
等級が上がった場合 | 更新月の初日が「診査を受けた日」 |
等級が下がった場合 | 更新月の3か月後の初日が「診査を受けた日」 |
等級の変化がなかった場合 | 診査はされなかったとみなされ、いつでも額改定請求が可能 |
額改定が可能になるのは、上記の「診査日を受けた日」から1年を経過した後になります。
2-3 額改定請求を行った場合
額改定請求を行った場合は、請求受付日が「診査を受けた日」として扱われるため、
等級が変わったかどうかにかかわらず、請求受付日から1年を経過した後に再度の額改定請求が可能になります。
3.額改定請求の特例
特定の障害については、権利が発生した日または診査日から1年を待たずに額改定請求をすることが可能になる特例があります。
この特例の対象になる場合は、上位等級に該当した時点で即座に額改定をすることで、年金を少しでも早く増やすことが可能になります。
以下は特例の対象になる障害の一覧になります。
(眼の障害)
1 両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの
2 一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの
3 両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの 4 一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの
5 ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
6 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
7 ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
8 ゴールドマン型視野計による測定の結果、求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2視標による両眼の視野がそれぞれ5度以内のもの
9 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
10 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
11 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
12 喉頭を全て摘出したもの
13 両上肢の全ての指を欠くもの
14 両下肢を足関節以上で欠くもの
15 両上肢の親指および人差し指または中指を欠くもの
16 一上肢の全ての指を欠くもの
17 両下肢の全ての指を欠くもの
18 一下肢を足関節以上で欠くもの
19 四肢または手指若しくは足指が完全麻痺したもの(脳血管障害または脊髄の器質的な障害によるものについては、当該状態が6月を超えて継続している場合に限ります)
20 心臓を移植したものまたは人工心臓(補助人工心臓を含む)を装着したもの
21 心臓再同期医療機器(心不全を治療するための医療機器をいう)を装着したもの
22 人工透析を行うもの(3月を超えて継続して行っている場合に限る)
23 6月を超えて継続して人工肛門を使用し、かつ、人工膀胱(ストーマの処置を行わないものに限る)を使用しているもの
24 人工肛門を使用し、かつ、尿路の変更処置を行ったもの(人工肛門を使用した状態および尿路の変更を行った状態が6月を超えて継続している場合に限る)
25 人工肛門を使用し、かつ、排尿の機能に障害を残す状態(留置カテ-テルの使用または自己導尿(カテーテルを用いて自ら排尿することをいう)を常に必要とする状態をいう)にあるもの(人工肛門を使用した状態および排尿の機能に障害を残す状態が6月を超えて継続している場合に限る)
26 脳死状態(脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態をいう)または遷延性植物状態(意識障害により昏睡した状態にあることをいい、当該状態が3月を超えて継続している場合に限る)となったもの
27 人工呼吸器を装着したもの(1月を超えて常時装着している場合に限る)
4.まとめ
額改定請求を行うためには、認定基準を知ることも大事ですが、「いつから行うことが出来るか」も同じように大事です。
可能な限り速やかに行うことで、少しでも多くの年金を得ることが出来るからです。
とはいえ、自分が上位等級に該当するのか、いつから請求できるかを適切に知ることは非常に困難です。
自分の障害が重くなったかもしれないと感じた場合は、一度専門家に相談してみるのが無難かもしれません。