「障害年金をもらっていると、会社辞めても失業保険はもらえないんですよね?」
「今失業保険もらってるんですけど、障害年金の請求ってできるんですか?」
実務上、失業保険と障害年金の関係について質問されることが多いです。
この記事では、失業保険について詳しく解説していきます。
1.失業保険と障害年金
結論から言うと、障害年金と失業保険の調整規定はありませんので、重複して受給可能です。
失業保険をもらいながら障害年金の請求をすることもできますし、障害年金をもらいながら失業保険を請求することもできます。
なお障害がある場合、就職困難者として認められれば失業保険の給付日数も増えます。
失業保険と障害年金の関係としては以上です。
ただ、実務上よく問題になる点を2点ほど補足します。
1-1.「働けない障害」の場合
失業保険は正式名称を「求職者給付」と言います。「仕事をする能力があり、仕事を探している人」に対して給付されるものです。
ですから、失業保険をもらえるのはあくまで「働ける障害」の人に限ります。
重度障害で全く働くことができない人は、失業保険をもらうこと自体が出来ません。
1-2.受給期間の延長
失業保険の受給期間は原則として、退職の翌日から1年間です。
ですが、療養のために退職後すぐに働けなくて、ようやく求職を開始したのが半年後、1年後という人もいます。
そうすると、本来であればもらえるはずの失業保険を一部しかもらえなかったり、人によっては全然もらえなくなる場合があります。
その場合、受給期間の延長と言う制度を利用することで、1年が経過した後も失業保険を受けることができます。
受給期間の延長は3年間まで認められています。
例えば退職後、2年間療養のため全く働けなかったとします。
その後、仕事を探せる状態になったとします。
その場合、受給期間はすでに終わっていますが、
「2年間ずっと働けなかったこと」「今は仕事を探せる状態になったこと」
の両方を診断書などで証明することで、受給期間を2年間延長することができます。
詳しくは管轄のハローワークにお問い合わせください。
2.失業保険と他の制度
障害年金の話からは外れますが、実務上失業保険と他の制度についても質問されることが多いため、この記事でまとめておきます。
2-1.傷病手当金と失業保険
傷病手当金は、業務と関係ない病気やケガで働けなくなり、4日以上休職した場合に、最大で1年6か月間、健康保険から給料の約2/3が補填される制度です。
これを受けている状態で退職すると、退職日の時点で通算して1年以上健康保険に入っている場合に限り、退職後も傷病手当金が続けて支給されます。
この傷病手当金は「働けない場合」に支給されるものですから、失業保険と同時にもらうこと自体ができません。
ただし傷病手当金をもらっている期間は受給期間延長の対象になりますので、傷病手当金をもらい終わってから失業保険を受給することができます。
2-2.特別支給の老齢年金と失業保険
一定の年齢の方は、65歳になる前に特別支給の老齢年金が開始され、65歳まで続きます。
この年金は失業保険との調整がかかります。額の多い方がもらえるというわけではなく、ハローワークに求職の申し込みをした時点で翌月分から老齢年金が止まります。
ですから、求職の申し込みをする前に自分の判断で「どっちが額が多いか」を判断しなければいけません。
なお、失業保険を受けている間は年金が停止されますが、もし失業保険を1日も受給していない月がある場合は、老齢年金が3か月程度遅れて支給されます。
3.まとめ
この記事では、よくある質問を元に失業保険と障害についてまとめてみました。
「失業保険と障害年金を同時にもらえる」という話は割と盲点のようで、驚かれることもあります。
「失業保険をもらいきってからじゃないと障害年金の請求はできないと思ってた」と相談者から言われたこともあります。
こういう制度の中には、知らなければ損をする、ということがしばしばあります。
この記事の知識を少しでも役に立てていただければ幸いです。