障害年金を受給している人の中には、生活が困窮している人も少なくありません。
例えば借金がある人が、お金を払いきれずに債務整理の手続きをしたとします。
その場合、障害年金はどうなるのでしょうか?
この記事では債務整理について解説します。
1.債務整理の種類
債務整理に明確な定義はありませんが、借金が払いきれなくなった場合に手続きを行うことで、利息や返済額を減らしたりする手続き全般を言います。
おおむね以下の3つを指します。
任意整理 | 裁判所を通さずに債権者と和解します。利息や返済額などを交渉し、現実的な返済計画の元に返済します。 |
民事再生(個人再生) | 裁判所を通して借金を整理します。認められれば借金が減額されます。 返済のための定期的な収入が必要です。 |
自己破産 | 裁判所を通して破産手続を行います。認められれば借金がなくなりますが、財産も処分されます。 |
2.生活保護と債務整理
障害年金と似た制度に、生活保護があります。
生活保護受給者が債務整理をする場合は、ほとんど自己破産に限られます。
その理由は制度の趣旨にあります。
まず、生活保護費はあくまで生活のための最低限の給付です。
そのため「借金の返済に生活保護費を使う」ということは原則として認められません。
したがって、任意整理の事実が発覚した場合、生活保護費が打ち切りにされてしまう可能性が高いです。
また、原則として定期収入を持っていない(生活保護費は定期収入として認められません)ことから、民事再生も認められません。
ですから、生活保護受給者が債務整理をする場合、原則として自己破産を選択することになります。
3.障害年金と債務整理
では、障害年金の場合はどうでしょうか。
結論から先に申し上げますと、障害年金の場合は任意整理をしながらの受給が可能です。
安定した収入が認められれば民事再生も可能になります。
それは障害年金が、その人が障害を負っていることに対して、失われた能力を補填するための給付だからです。
ですから、用途に制限はありません。借金の返済に使おうが本人の自由です。
なお、任意整理を行う場合、場合によっては過払い金が返ってくることもあります。
しかし、障害年金には収入認定という制度もありませんので、収入があったことを役所に返納する必要も報告する必要もありません。
4.障害年金と自己破産
自己破産をした場合ですが、自己破産をしても障害年金の受給権はなくなりません。
自己破産の手続きが終われば、障害年金を普通に受給できます。
また、自己破産前でも、障害年金は差押禁止債権ですので、原則として差し押さえの対象になりません。
ただし、これは「債権として差し押さえることが出来ない」という意味でしかありません。
一度受け取った後の障害年金は単なる現金ですので、差し押さえの対象になります。
例えば年金を貯めておいた銀行預金を差し押さえられてしまい、年金を引き出せなくなってしまう等の可能性はあります。
遡及で5年分の年金が振り込まれたのに、それが差し押さえられてしまうという事もあります。
自己破産を考えている方で、これから障害年金の請求をしよう、と思っている人は、請求するタイミングが重要になることがあります。
5.まとめ
「障害年金よりも生活保護のほうが額が大きいため、得だ」という話はよく聞きます。
ですが、生活保護のほうが一方的に得というわけではありません。債務整理にまつわる話もその一つです。
なお、債務整理を考えている方は、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。