上肢の機能障害 障害年金の認定基準 等級について(切断 リウマチ)

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私が書きました
shiroki.sr

「手の障害で障害年金が出る」という話になると、大抵の方が「切断」を思い浮かべるようです。

実際に、片手を切断したら2級という認定基準もあります。

ですが、実務上は「関節の動きが悪い」「筋力が落ちた」「麻痺で動きづらい」という相談が大半です。

そしてこのような機能障害も、障害年金の対象になるのです

この記事では、主に機能障害を中心に、上肢(手、腕)の障害について解説します。

なお、指の障害人工関節については別ページにまとめてあります。

1.切断障害(腕が切断された場合)

腕が切断された場合、必然的に指が使えなくなります。したがって、等級の認定は指の障害の基準に従います。

両腕が切断された場合は「両上肢のすべての指を欠くもの」に相当するため、1級相当になります。

片腕が切断された場合は「一上肢のすべての指を欠くもの」に相当するため、2級相当になります。

・両腕切断=1級

・片腕切断=2級

腕を根元から失っても、手首から先で失っても、年金の等級は変わりません。

ただし、差引認定を行う場合は、切断部位によって等級が変わる場合があります。

2.上肢の機能障害

機能障害の場合の認定方法は、切断と比べると複雑です。

まず、上肢の三大関節(肩、肘、手首)にどれくらい機能障害が出ているかを見たうえで、最終的に腕全体の機能障害の認定を行います。

まずは関節の判定方法を見てみましょう。

2-1.関節の機能障害

関節の機能障害は、以下の四段階になります。

原則として、他動可動域(関節が動く範囲)が通常からどれくらい減少しているかによって評価が変わります。

特に実務上、「全く用を廃しているもの」に認められるか否かが重要になります。

評価関節の他動可動域関節可動域以外の条件
全く用を廃しているもの関節の可動域が1/2以下で、筋力も半減している筋力が著減または消失
不良肢位での強直
用を廃しているもの1/2以下常時固定装具が必要な動揺関節
著しい機能障害を残すもの2/3以下時に固定装具が必要な動揺関節、習慣性脱臼
機能障害を残すもの4/5以下固定装具不要な動揺関節、習慣性脱臼

※関節によっては、固まってほぼ動かない状態(強直)だったり、安定せず常にぐらぐらしていたり(動揺関節)と、特殊な状態にある場合があります。

強直の場合は、強直している位置によって「良肢位」「不良肢位」という判断がされます。

例えば、肘が90度曲がって強直していればある程度日常生活には使えます(良肢位)が、180度の状態で強直していれば腕の機能がほとんど失われる(不良肢位)ことになります。

動揺関節の場合は、固定装具がどの程度必要かによって評価が変わります。

2-2.二関節が「用を全く廃したもの」

上肢の三大関節のうち、二関節以上が「用を全く廃したもの」に該当した場合、その腕全体が「用を全く廃したもの」とみなされます。

例えば、右肘と右手首について可動域、筋力がともに半減していれば「右腕の用を全く廃したもの」と評価されます。

両上肢が「用を全く廃したもの」に該当した場合は1級に該当します。

一上肢が「用を全く廃したもの」に該当した場合は2級に該当します。

・両腕の用を全く廃したもの=1級

・片腕の用を全く廃したもの=2級

2-3.一関節だけ「関節の用を全く廃したもの」

上肢の一関節だけが「用を全く廃したもの」に該当した場合は、以下のように判定されます。

両上肢の一関節がそれぞれ(たとえば、右肘と左肘)「用を全く廃したもの」に該当した場合は、「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」として2級に該当します。

一上肢の一関節だけが「用を全く廃したもの」に該当した場合は、「一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」として3級に該当します。

2-4.関節が「用を廃したもの」

上肢の三大関節のうち、二関節が「用を廃したもの」に該当した場合は、3級に該当します。

一関節だけが「用を廃したもの」に該当した場合は、障害手当金に該当します。

2-5.筋力低下による認定基準

筋力が、「著減」「消失」となっている場合は、その関節は「用を全く廃したもの」と評価されます

「半減」とされた場合は、以下のような取り扱いになります。

両上肢の一関節がそれぞれ(たとえば、右肩と左肩)「筋力半減」に該当した場合は、「両上肢に機能障害を残すもの」として3級に該当します。

一上肢の一関節だけが「筋力半減」に該当した場合は、「一上肢に機能障害を残すもの」として障害手当金に該当します。

2-6.その他の認定基準(障害手当金)

一上肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障害を残すものは、障害手当金に該当します。

一上肢の三大関節のうち、一関節に機能障害を残すものは、障害手当金にも該当しませんが、併合認定の際に用いられることがあります。

2-7.人工関節、人工骨頭の挿入置換

人工関節、人工骨頭を挿入置換した場合は、こちらの記事でまとめてあります。

3.変形障害(リウマチ)

長管状骨(手の場合、橈骨、尺骨、上腕骨)が骨折した後、うまく治癒せず変形してしまうような場合があります。

3-1.偽関節

骨折部が完全に癒合せず、曲がってしまう状態を偽関節と呼びます。

骨幹部(骨の末端を除いた部分)にこの偽関節が出来てしまった場合は、以下のいずれかに該当すれば3級として認定されます。

・上腕骨に偽関節が出来た場合で、運動機能に著しい障害を残す場合

・橈骨と尺骨両方に偽関節が出来た場合で、運動機能に著しい障害を残す場合

いずれにも該当しない場合は、障害手当金相当となります。

3-2.著しい転移変形

偽関節まではいかないものの、上腕骨、橈骨、尺骨のいずれかに変形が出た場合です。

この時、外部から観察できる程度(15度以上の湾曲)の変形であれば、障害手当金相当となります。

4.まとめ

この記事では、上肢の障害についてまとめました。

「腕が全く動かない」とか、「切断した」とかいうレベルに達していなくても、年金は請求できます。

ただ、基準はやや難解です。特に自分の腕の可動域や筋力について言われても良くわからない、という方も多いのではないでしょうか。

もし自分も年金に該当するかもしれない、と思ったら、一度専門家に相談することをお勧めします。

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