1.障害者特例
障害者特例についてご存じでしょうか。
ほとんどの人にとっては関係ありませんが、昭和36年3月31日までに生まれた男性と、昭和41年3月31日までに生まれた女性については年金の額が大きく変わるかもしれないという制度です。
条件を以下にまとめます。
・特別支給の老齢厚生年金(65歳より前に始まる老齢年金)を受け取っている
・障害厚生年金3級以上に相当する障害がある
・現在、厚生年金に加入していない(仕事をしていない)
1-1.特別支給の老齢厚生年金について
「特別支給の老齢厚生年金」とは、昭和61年の年金改正の際に設けられた制度です。
改正で年金開始が60歳から65歳に引き上げられることになったのですが、急に引き上げても困窮する方が続出するため、「当分の間は、60歳から特別に厚生年金を支払う」という時限的な年金制度です。
当初は定額部分に報酬比例部分が乗る形で、通常の老齢年金と同水準の額が支給されていましたが、年数の経過に応じて減額が進んでいきました。
令和4年現在では、以下のようになっています。
障害者特例とは、定額部分の支給がされない障害者の方(上の表で「なし」となっている範囲)に対して、定額部分を支給するという特例です。
1-2.障害者特例に該当する方
条件は3つです。
・前述の「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っていること
・障害厚生年金3級以上に相当する障害があること
・現在、厚生年金に加入していないこと
特別支給の老齢厚生年金については、開始年齢になると申し込みへの案内が機構から届きます。
ですが、障害者特例の案内は自動的には来ません。
こちらから診断書を作成し、3級以上に該当することを証明して、請求をする必要があります。
1-3.障害者特例によって貰える額
定額部分の額の計算式は以下の通りです(令和4年度)。
定額部分の額 = 1,621円 × 加入月数
厚生年金加入期間が20年以上あって、生計を維持している配偶者、子がいる場合は、加給年金も支給されます。
40年間厚生年金に加入していた場合は、年額778,080円(+加給年金)を老齢年金に上乗せしてもらうことができます。
2.障害者特例チェック
「障害者特例に該当するかどうか」について、チェック項目を作成しました。
2-1.特別支給の老齢年金を貰えるか?
特別支給の老齢年金は、近い将来なくなる制度です。
受給できるのは、昭和36年3月31日までに生まれた男性と、昭和41年3月31日までに生まれた女性に限られます。
また、老齢年金の受給資格を満たしていて、かつ厚生年金の加入歴が1年以上ないと、この年金はもらえません。
2-2.障害年金3級以上に該当するか?
判断がもっとも難しいところです。
例えば目や耳であれば、矯正視力で両目0.1以下、聴力であれば両耳70dB以上が3級に該当します。
人工関節や人工弁など、「これを入れていれば3級」という基準もあります。
しかし、精神障害、内部障害の場合は、明確な数値基準がありません。診断書や提出書類を見た上での総合認定になります。
「自分も3級になるか知りたい」と思った場合は、専門家に相談することをお勧めします。
2-3.厚生年金に加入しているか?
働いていて、職場の厚生年金に加入している場合は、障害者特例は使えません。
特別支給の老齢年金自体は(一定の調整はかかりますが)受給可能なので、退職してから改めて障害者特例を請求することになります。
2-4.障害年金とどちらが得か?
障害年金3級以上に該当した場合、人によっては障害年金をそのまま請求することも出来ます。
障害者特例を使うか、障害年金を貰うかは、ケースバイケースで、得な方を選択することになります。
障害年金と障害者特例を両方請求し、仕事しているときは障害年金、仕事を辞めたら障害者特例に切り替えるなど、都合に合わせて選択していくことも出来ます。
3.障害者特例まとめ
この制度は、「初診日がわからない」「納付要件がない」など、何らかの理由で障害年金を受給できない場合でも請求が可能です。
高齢になると、人はどうしても体調が悪化します。
糖尿病や心臓、人工関節など、知らずに3級の受給権を満たしている人も少なくありません。
自分もこの制度が使えるかもしれない、と思った場合は、専門家に相談することをお勧めします。