
うつ病や双極性障害で仕事ができなくなり、障害年金を考えている」
「これまでに何度もメンタルの不調を繰り返している……」
当事務所にこのようなご相談で来られる方の多くを詳しくヒアリングしていくと、実はそのベースに「発達障害(またはその傾向)」が隠れているケースが非常に多くあります。
実は、単なるうつ病よりも、「発達障害の二次障害(特性による生きづらさからうつ病などを発症した状態)」の方が、障害年金を受給しやすい(認められやすい)傾向があります。
なぜなら、うつ病は「治療で治る可能性がある病気」とみなされがちですが、発達障害は病気ではなく生まれ持った「脳の特性」であり、治るものではない(長期にわたって生きづらさが続く)からです。
しかし、発達障害は「本人の自覚のなさ」や「書類での伝え方の難しさ」から、不支給になってしまう独自の落とし穴も存在します。
今回は、発達障害(二次障害を含む)で不支給になってしまう代表的な4つのケースと、それを防ぐための専門的な対策を詳しく解説します。
目次
1. 落とし穴① 本人の「病識のなさ(自覚不足)」と「高い自己評価」
発達障害の申請において、実は最も大きな障壁になるのが「本人に病識(障害の自覚)がない」ケースです。
職場では以下のようなトラブルが頻発し、周囲が頭を抱えているにもかかわらず、本人はそれを「自分の障害のせい」とは認識していません。
〇ケアレスミスや勘違い、指示の聞き違えが異常に多い 〇「報告・連絡・相談(報連相)」が全くできない 〇マルチタスクができず、想定外の事態が起きるとパニックになる
それどころか、プライドや自己評価の高さが影響し、「自分は悪くない。周りの教え方が悪い」「上司からパワハラを受けている」と主観的に思い込んでしまうことが多々あります。
この状態のまま医師の診察を受けると、本人は「仕事はちゃんとしています。周りの環境が悪いだけです」と主張してしまいます。
医師も本人の言葉ベースでカルテを作成するため、結果として「就労可能・日常生活に支障なし」という、実態とかけ離れた軽い診断書が作られてしまい、不支給に直結するのです。
2. 落とし穴② 「会話がスムーズ」「IQが低くない」から大丈夫という誤解
発達障害のもう一つの特徴に、「一見すると普通に見える(体調の悪さが外見に現れない)」という点があります。
〇初対面の人とでも、マニュアル的な受け答えや表面的な会話はスムーズにできる 〇知能指数(IQ)が平均域、またはそれ以上である
このような場合、医師や年金機構の審査官に「日常生活に大きな支障はない」と判断されてしまうケースが後を絶ちません。
しかし実際には、前述のような職場のトラブルや、社会生活における「生きづらさ」を激しく抱えているケースがほとんどです。
3. 落とし穴③ 「働いている=元気」とみなされてしまう就労の壁
最も不支給になりやすいのが、「現在、何らかの形で働いている(籍がある)」ケースです。
障害年金(特に2級以上)の基準は、ざっくり言うと「日常生活や労働に著しい制限があること」です。そのため、年金機構側は「働けている=問題ないのでは?」と考えがちです。
本人は「周りが悪い」と思っていても、実際には「職場の多大な忍耐や、手厚い援助・配慮」があって初めて雇用が維持されているケース(あるいは、クビ寸前でトラブルを繰り返しているケース)が多々あります。
こうした「周囲の負担や配慮の存在」が書類に正しく反映されていないと、「一般人と同様に問題なく働けている」と誤解され、不支給判定を受けてしまいます。
4. 落穴④ 診察時の「大丈夫です」が招く、診断書とのギャップ
診察室で先生から「最近どうですか?」と聞かれた際、本人が「なんとかやってます」「問題ありません」と答えてしまう問題です。
これは先ほどの「病識のなさ」だけでなく、「先生によく思われたい」「自分のダメなところを認めたくない」という心理から、無意識に自分を良く見せようとしてしまう(=過大申告)ことで起こります。
障害年金の審査は100%書類で行われます。本人が認識している「主観」と、周囲が見ている「客観的なトラブルの事実」にズレがあれば、当然不支給のリスクは跳ね上がります。
5. 不支給を防ぐために!今すぐできる対策
発達障害、特に「本人の自覚が薄いケース」での不支給を防ぐ最大のカギは、「家族や職場など、周囲から見た『客観的な困りごと・トラブルの実態』をいかに書類に落とし込むか」です。
家族や第三者が「職場のリアルなトラブル」をメモにして医師に渡す 本人の「問題ない」という言葉だけでは、正しい診断書は書けません。ご家族などが「実際はマルチタスクができずパニックになる」「ミスを他人のせいにしてしまう傾向があり、トラブルが多い」といった客観的事実をメモにまとめ、事前に医師に共有することが不可欠です。
職場の上司や同僚に「実際の仕事の様子」を書き出してもらう(強力な対策!) 本人の高い自己評価や診察時の発言を覆すために極めて有効なのが、「職場の第三者からの証言」です。可能であれば、職場の上司や同僚、人事担当者などに、実際の勤務態度やトラブルの頻度、会社側が行っている特別な配慮などをまとめた「申立書(または書面)」を作成してもらいましょう。これを年金請求時に一緒に提出することで、審査官に「本人は大丈夫と言っているが、現場ではこれほど支障が出ている」という動かぬ事実を伝えることができます。
病歴・就労状況等申立書で「周囲の支障」を客観的に翻訳する 本人が作成すると「周りが悪い」という愚痴になってしまいがちですが、そこを「どのような業務上の支障が出ているか」「どれだけ周囲がフォローしているか」という客観的な事実に翻訳して年金機構に伝える必要があります。
5. まとめ
「うつ病」の診断で苦しんでいる方の多くは、実はご自身でも気づかないうちに「発達障害の特性(生きづらさ)」と戦い続けてこられた方々です。
発達障害の障害年金申請は、「本人が困っていると自覚しているケース」ばかりではありません。
「周りはこんなに困っているのに、本人は頑なに認めないし、医師にも伝わらない」というケースこそ、専門家の介入が必要です。
当事務所では、ご家族や職場関係者の方からのヒアリングを重視し、ご本人のプライドを傷つけないよう配慮しながら、職場のリアルな仕事の様子を正しい書類の形にして年金機構に伝えるサポートを行っています。「ただのうつ病ではない気がする」「うちの家族のケースはどうだろう?」と思われたら、ぜひ一度ご相談ください。
