障害年金 精神の診断書の書き方 考慮すべき要素以外のポイント 

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shiroki.sr

障害年金の請求で特に多いのは、うつ病、双極性障害、発達障害などの精神障害と、知的障害に関わるものです。

しかし、視力や聴力などと違い、精神障害には数値化できる基準というものがありません。知的障害の場合も、IQの数値だけで審査をするわけではありません。

では、いったい審査はどういう基準で行われているのでしょうか。

認定基準の文言は以下のようになっています。

 

1級日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
障害手当金労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

おおむねの目安でいうと、精神障害によって仕事に大きな支障が出ていれば3級、

仕事ができず、身の回りのことにも支障が出るようなら2級、

自力で日常生活を送るのが難しく、家族や施設で介護を受けている状態になると1級、という基準です。

しかし、働いていて2級をもらっている人もいれば、働けないのに3級すらもらえなかった人もいます。この基準も絶対ではありません。

この記事では、単純なようで難しい精神障害の認定方法について解説します。

 

 

1.精神障害の判定のしかた

前提として、日本年金機構の審査は障害によってどれだけ日常生活や労働に支障が出ているかを見ます。

しかし実際に担当者がやって来て、生活や就労の状況をチェックするわけではありません。あくまで提出した書類だけで審査が行われます。

そうなると、重要になるのはやはり医師が作成する診断書です。年金機構は主に診断書を見て、請求者の抱えている支障がどれだけ重いかを審査します。

裏を返せば「年金機構は診断書のどの部分をどういう切り口で見ているのか」というポイントを知ることが、精神障害の認定方法を知る上で非常に重要になります。

とは言え、精神障害の診断書は記載項目も多く、内容も複雑です。見るべきポイントを絞って解説を行います。

 

 

2.ガイドラインの目安表

最初に、以下の表をご覧ください。これは厚労省作成の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に掲載されている、障害等級の目安表です。

 

〈障害等級の目安〉 

 

「自分の症状がおおむね障害年金何級に該当するのか」の目安を示す、重要な表です。

 

表には「判定平均」「程度」というフレーズが出てきますが、これについても解説します。以下の画像をご覧ください。

 〈診断書精神の障害用〉 ※クリックで拡大

これは精神用の診断書の裏面です。

 

医師はこの欄を使って請求人の日常生活能力を判定します。

通信簿のように「食事」「身辺保清」「金銭管理」「通院服薬」「対人関係」「危機管理」「社会性」の7項目を4段階評価します。

さらに、日常生活能力程度を5段階で総合評価します。

この日常生活能力の判定・程度については、診断書作成の上で非常に重要になる項目ですので、診断書の記載要領についてはこちらの記事で解説します。

この結果と等級の対応関係を示したのが上の目安表になります。例えば7項目の判定がすべて左から3番目で、右側の評価が(3)だった場合は、判定平均3、程度(3)として2級相当になります。

〈障害等級の目安〉 ※クリックで拡大

目安表で2級となったからと言って必ず2級になるとは限りませんが、年金機構のデータ(※)上では90%以上が目安通りの等級に認められています。

つまり、この目安表に該当しなければ障害年金の受給率は極端に下がります

※参照 障害年金業務統計  https://www.mhlw.go.jp/content/12508000/000669908.pdf

 

 

3.目安表以外の要素

「日常生活能力の評価」は非常に重要です。実務上も診断書を見るときは、裏面を見て「目安表に照らして何級になるのか」を最初に確認します。

しかし、「目安表で2級相当だから2級決定」というわけではありません

「目安では2級でも、他の要素も含めて総合評価した結果、2級に該当しない」という審査をされることも多いからです。

ガイドラインでは「診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価するため、目安と異なる認定結果となることもあり得る」とされています。

もっとも、2級相当が1級になったり、3級相当が1級、2級に認められることはまずありませんが(非該当相当が3級認定されるケースはまれにあります)。

しかし、2級相当が3級認定されたり、2級、3級相当が不支給にされるケースは珍しくありません。

また目安表には「1級または2級」「2級または3級」「3級または非該当」というように、複数等級を含む箇所があります。

この場合も「診断書等に記載される他の要素」を見て、上位なのか下位なのか審査されることになります。

では、年金機構が評価の手がかりにしている「診断書等に記載される他の要素」とは、具体的に診断書のどういう記載なのでしょうか。

代表的なものを解説していきます。

 

 

3-1.就労状況

※上記診断書3-1箇所

精神の診断書には、他の診断書にはない「就労状況」を記載する欄があります。実際に請求人の就労状況は等級判定にかなり大きな影響を及ぼします。

「目安表で2級相当の診断書なのに不支給になった」という場合、「就労していたこと」が原因であるケースがかなり多いです。 

では、ガイドラインに「就労をしている人には年金は与えません」と書いてあるかと言うと、そういう記載はありません

「現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する」とされています。

ですから、障害者雇用として配慮を受けて働いていたり、長期休職中だったりという事情があれば、就労していても障害年金の対象になります。

ただし、そういう事情をしっかりと年金機構側に伝える必要がありま

休職中、調子が悪く週1日しか働けてない、配慮がなければ仕事が出来ない等の事情を、しっかりと就労状況欄に書いてもらいます。

また、必要に応じて出勤簿や給料明細、職場の上司からの聞き取りなど、補助資料が必要な場合もあります。

精神障害の場合、就労状況はかなり厳しくみられる傾向にあります。請求の際にはしっかりと準備を整える必要があります。

精神障害と就労について、詳しいガイドラインをこちらの記事にまとめてあります。よろしければご参照ください。

 

3-2.家庭及び社会生活についての具体的な状況

※上記診断書3-2箇所

精神の診断書には、現在の生活環境と全般的状況を記載する欄があります。

 

ここで重要なのは「同居者の有無」です。認定にあたっては独居かどうかという点が重視されるからです。独居生活を送れていれば、それだけで「ある程度の日常生活能力がある」と推定されてしまいます。

就労の場合と同じく、例えば近くに住む家族に援助を受けていたり、福祉サービスを利用しているなど、独居生活が難しいので、援助が必要という点を強調する必要があります。

全般的状況は対人関係を具体的に記入する欄です。ここも審査ではよく見られています。

精神疾患の場合、「他人との人間関係はないけど、家族とは普通に話せる」というような、対人関係が限定的なケースが多いです。

細かいことですが、こういう場合、「家族との関係は問題なし」だけでなく家族以外との人間関係がない」と言う点もしっかり書いてもらうことが大事です。

 

 

3-3.日常生活活動能力及び労働能力

※上記診断書3-3箇所

 

すべての診断書についている欄ですが、精神の審査では特に重要になります。

能力がない場合は「日常生活能力は著しく低い」「就労能力はない」等としっかり書いてもらう必要があります。

書き方も注意が必要で、「家族の援助もあって自立した生活が出来ている」という記載を見られ「自立した生活が出来ているから」と不支給にされた例があります。

「同居家族からの援助があって生活が成り立っている」というように、援助を前提とした生活能力であることを明記してもらうのも大事です。

 

 3-4.現在の病状又は状態像

※上記診断書3-4箇所

診断書表面の下部です。

左側には現在の症状をチェックする欄があり、右欄には具体的な症状や服薬状況を記載してもらいます。

現在の症状は出来る限り正確にチェックをもらいましょう。

特に注意する必要があるのは「てんかん」で請求する場合で、この欄に発作の種類と回数を記載します。

てんかんについては発作の種類と回数が認定基準を満たす必要がありますので、非常に重要です。

また、服薬状況も審査の際に見られます。例えばうつ病であれば抗うつ剤が出ているかが重要になります。

もし出ていない場合はしっかりと理由を申し立てる必要があります。(副作用のため抗うつ剤を中断している、等)

 

4.まとめ

この記事では「精神の診断書の読み方」と言う切り口で、ざっくりと精神障害・知的障害の審査方法を解説しました。

実際には福祉サービスの利用の有無とか、知的障害であれば教育歴や臨床検査の欄も重要になりますので、見るべきポイントはさらに多くなります。

あくまで基礎知識として役立てていただければ幸いです。 

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